日本酒の味を決める重要な役割となるのが「お米」です。一般的に酒米もしくは酒造好適米と呼ばれるものですね。
でも、酒米の事を考えると色んな疑問が出てきませんか?
- 酒米と普通のお米って何が違うの?
- 酒米がどんな味の変化があるの?
- 酒米の生産量が多いのはどれ?
- 全国にはどんな酒米の種類があるの?
というわけで、こういった内容を分かりやすくまとめています。
酒米って何?普通のお米との違いは?
まずは酒米と私達が一般的に食べているお米(食用米)との違いについてです。
いやいや、同じ米なんだから違いなんてほぼないでしょ?と思うかもしれませんが、明確に違う点がいくつかあるんですよ。
中心部分に心白がある
酒米と食用米の大きな違いと言えるのが、心白があるかどうかという点です。
酒米の方を見てみると、お米の中心部分に白い固まりが見えますが、これが「心白」と呼ばれる部分です。
この心白があることで、醪(もろみ)を発酵させやすくなるんですね。
お米の粒の大きさが違う
2つ目の違いは、米粒の大きさです。食用米と比べると酒米の方が一回り大きくなります。
もちろんただ大きいのではなく、酒米は基本的に米を削る事を前提にしているので、大きい方が有利なんですね。
ちなみに削る割合を食用米と比べると、
食用米:10%程度
酒米:30~50%(ランクによって削る割合が異なる)
どうですか?全然違いますよね。
酒米をここまで削る理由は、心白の外側は雑味や苦味の元となるタンパク質や脂質があるからなんです。
これが残ったままお酒作りをしても、なかなか美味しい日本酒ができないんですね。
ちなみに、日本酒のラベルに精米歩合○○%という表示がありますが、これがお米を削った割合です。
精米歩合70%ならお米の大きさは最初の7割、3割を削っているということ。
酒造りのし易さ
最後の違いは、ズバリ酒造りのし易さにあります。
酒米には、
・吸水率が高い
・粘り気が少ない
こういった特徴があるので、日本酒を作る過程で非常に扱いやすいお米になります。
酒米の主な種類と特徴!生産量ランキングで紹介!
農林水産省によると、現在は100種類以上の酒米が生産されています。
これを全て紹介するのは困難ですので、生産量が多い酒米から順にランキング形式で紹介していきます。
混同されがちだが「酒米」と「酒造好適米(しゅぞうこうてきまい)」は違うとですたい。
酒造好適米を名乗れるのは、特別な検査基準をクリアしたお米。一方、酒米は日本酒に使われているお米全般のことを指すとですたい。
つまり食用米でも日本酒造りに使用されれば「酒米」ですたい。
山田錦(やまだにしき)
酒米の生産量1位は「山田錦」です。日本酒を知らない人でも一度はこの名前を見たことがあるのではないでしょうか?
大粒で心白が大きく、乾燥に強い。そればかりか雑味の元となるタンパク質が少ないので、酒造りの為にあるような酒米と言っても過言ではないでしょう。
山田錦で醸したお酒は、まろやかなコクがあり雑味のないキレイな味になるのが特徴です。
日本酒の出来を競う鑑評会では、約8割が山田錦を使用していることからも酒米としての人気が伺えますよね。
主な生産地 | 兵庫県 |
---|---|
生産量 | 34,059トン |
有名銘柄 | ・獺祭 ・くどき上手 ・白糸 |
五百万石(ごひゃくまんごく)
山田錦と並んで酒米の最上位に君臨するのが「五百万石」です。
五百万石は、心白が大きいのでお米が割れやすく、高精米である吟醸や大吟醸には向いていませんが、その分麹が造りやすいという特徴があります。
また、味わいも山田錦のような芳醇タイプではなく、淡くスッキリとした酒質になります。
主な生産地 | 新潟県 |
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生産量 | 21,039トン |
有名銘柄 | ・〆張鶴「純」純米吟醸 ・久保田 ・八海山 |
美山錦(みやまにしき)
長野県で開発された酒造好適米!それが「美山錦」です。
美山錦は米が硬く、醸造の時に溶けにくいという特徴があります。溶けにくいということは、酒の雑味が生まれにくいということ。
美山錦で造られたお酒は、五百万石の近い味わいで、軽快でスッキリした仕上がりになります。
主な生産地 | 長野県 |
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生産量 | 6,392トン |
有名銘柄 | ・瑠璃(ラピスラズリ) ・吾妻嶺 純米吟醸 美山錦 ・花陽浴 純米大吟醸 美山錦 無濾過生原酒 |
雄町(おまち)
今や酒米の頂点に君臨する「山田錦」や「五百万石」のルーツとなったのが「雄町」。酒米として最も古い歴史があります。
雄町の味わいは、しっかりとした旨味と深みのがあるコク、それでいて甘味や酸味のバランスが整った仕上がりになります。
こういった特徴の酒質を持つことから、山田錦が登場するまでは、「品評会で上位を目指すなら雄町じゃないと無理だ!」と言われるくらいの酒米だったのです。
ただ、栽培や酒造りが難しいことから、一時期は徐々に人気も低迷していきましたが、現在では再度人気が高まっている酒米です。
主な生産地 | 岡山県 |
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生産量 | 2,772トン |
有名銘柄 | ・フモトヰ 純米吟醸 雄町 ・酔鯨 備前雄町 ・来福 純米吟醸 ・作 雅乃智 |
秋田酒こまち(あきたさけこまち)
ルーツを辿って行けば、「五百万石」「雄町」「亀の尾」などに辿り付くのが「秋田酒こまち」です。
ネーミングからも分かるように秋田で開発が行われた酒米ですね。
秋田酒こまちの特徴は「育てやすい」「収穫量が多い」「雑味が少ない味」なので、酒米としての適性が高いお米です。
味わいは、シャープな甘味と、汲んだばかりの天然水のような透明がある仕上がりになります。
主な生産地 | 秋田県 |
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生産量 | 2,375トン |
有名銘柄 | ・福小町 大吟醸 秋田酒こまち仕込み ・晴田 純米吟醸 秋田酒こまち55 ・巡米酒 まんさくの花 秋田酒こまち70 |
八反錦1号(はったんにしき)
広島県の酒米のルーツである「八反」の流れを継ぐのが「八反錦1号」です。
味わいは、淡麗でありながらも、幅が広いコクがあるお酒に仕上がります。
広島県の奨励品種(県が応援する優良な酒米)にも指定されているんですよ。
主な生産地 | 広島県 |
---|---|
生産量 | 1,889トン |
有名銘柄 | ・天寶一 特別純米 八反錦 ・酔鯨 純米酒 八反錦60% |
ひとごこち
新・美山錦として後を追っているのが「ひとごこち」です。
美山錦の弱点であった「タンパク質含有量が少ない」「心拍が出にくい」を克服し、酒米としての適正が高めです。
また、寒さにも強く、風で稲が倒れにくいので、生産のし易さでも評価が高い酒米です。
味わいは、美山錦に比べて淡麗ですが、より幅が広い仕上がりになります。
主な生産地 | 長野県 |
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生産量 | 1,650トン |
有名銘柄 | ・姿 ひとごこち 純米吟醸 無濾過生原酒 ・信州亀齢 純米 ひとごこち ・川中島 幻舞 ひとごこち 純米無濾過生原酒 |
出羽燦々(でわさんさん)
吟醸酒のメッカとも言われる山形県を代表する酒米が「出羽燦々」です。
出羽燦々で醸したお酒は、淡麗な味わいながらも、後味のキレの良さ特徴的なお酒に仕上がります。
ちなみに、出羽燦々の由来は、
出羽:昔あった令制国(現在の山形県と秋田県)
燦々:山形県の1,400mまでの山の数(33個)
こういったカンジです。
主な生産地 | 山形県 |
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生産量 | 1,457トン |
有名銘柄 | ・出羽桜 純米吟醸酒 出羽燦々誕生記念 ・米鶴 純米吟醸 まほろば ・二兎 出羽燦々 五十五 純米吟醸生原酒 |
吟風(ぎんぷう)
北海道の酒造好適米「初雫」に続き、2002年に北海道2番目の酒造好適米になったのが「吟風」です。
初雫に比べて心白が出やすく、吟風酒や大吟醸酒にも向く酒米としての特徴があります。
吟風の味わいは、口当たりが優しく、角がない丸い味に仕上がります。
主な生産地 | 北海道 |
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生産量 | 1,255トン |
有名銘柄 | ・黒龍 純米大吟醸 吟風 ・W(ダブリュー) 吟風 純米無濾過生原酒 ・純米 吟風国稀 |
越淡麗(こしたんれい)
生産量10位に入ったのは「越淡麗」。新潟県のリーサル・ウェポン的な酒米と言っても差し違いないでしょう。
酒米の2トップに君臨する「山田錦」と「五百万石」を掛け合わせて開発された越淡麗は、両者の特徴をうまい具合に引き継いでいます。
味わいは、山田錦のように柔らかくも濃厚でありながら、五百万石のようなキレを持っています。
また、五百万石とは異なり、精米歩合を高めても耐える事ができる力強さもあります。
主な生産地 | 新潟県 |
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生産量 | 1,233トン |
有名銘柄 | ・かたふね 純米吟醸 ・鶴齢 特別純米 越淡麗 ・〆張鶴 純米吟醸 越淡麗 |
出典:酒造好適米の農産物検査結果(生産量)と30年産の生産量推計
酒米の系譜は祖父母までしか遡っていないのもあります。詳しく知りたい方は「交配組合せ」を参考にしてみて下さいね。
【番外編】知っておいて損がない酒米3選!
なにも有名な酒米は生産量だけに反映されている訳ではありません。
というわけで、ここからは生産量はランキング外ですが、知っておくとドヤ顔できる酒米をご紹介致します。
亀の尾(かめのお)
食用米、酒米問わず多くのお米のルーツとなっているのが「亀の尾」です。
粒が大きく、味わいも芳醇でコクがあり、吟醸系や大吟醸系の酒米としても相性が良い品種です。
ですが、病害虫に弱いという欠点から、戦後にはほとんど造り手がいなくなってしまいました。
一時期は、ほとんど日の目を見る事がなったのですが、「夏子の酒」のモデルとなった事から再ブレイク。近年、新たに注目を浴びているのが亀の尾なんです。
主な生産地 | 山形県 |
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生産量 | 不明 |
有名銘柄 | ・純米大吟醸 亀の尾(伊豆本店) ・まんさくの花 亀ラベル ・末廣 純米大吟醸 亀の尾 |
愛山(あいやま)
愛山は1949年に誕生した酒米。名前の由来は、両親である「愛船117」「山雄67」から一文字ずつ取って「愛山」と名付けられました。
愛山は心白が大きいのが特徴で、上手に醸すことで独特の旨味や甘味、そしてエレガントなコクがある味わいに仕上がります。
ですがその反面、心白が大きい事で精白すると砕けやすかったり、栽培が難しいこともあり、使用していたのは「剣菱酒造」だけでした。
そんな剣菱酒造が阪神淡路大震災で被災し、その年の酒造りを断念したことで愛山の存続の危機に。
愛山を絶やしてはダメだ!ということで、色んな酒蔵が使用するにようになったんです。
主な生産地 | 兵庫県 |
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生産量 | 716トン |
有名銘柄 | ・謙信 純米大吟醸 愛山 ・Takachiyo59 愛山 無調整生原酒 純米吟醸 ・鍋島 純米大吟醸 愛山 |
神力(しんりき)
古くは酒米だけでなく、食糧難を支える食用米としても人々を支えたのが「神力」です。
昭和初期には造られなくなりますが、平成6年に熊本県農業研究センターで復活を遂げたという歴史があります。
口当たりは爽やかですが、口に含むとお米の甘味を感じれる仕上がりになります。
主な生産地 | 熊本県 |
---|---|
生産量 | 36トン |
有名銘柄 | ・玉水 神力 純米吟醸 ・龍力 特別純米 神力 ・千福 神力 生もと純米無濾過原酒 |
都道府県別に酒米を一覧表でご紹介
ここまでご紹介できなかった酒米を都道府県別に一覧表にまとめてみました。
北海道・東北地方の酒米
地域 | 品種 |
---|---|
北海道 | 吟風、彗星、きたしずく |
青森県 | 古城錦、華想い、華吹雪、豊盃、青系酒184号 |
岩手県 | ぎんおとめ、吟ぎんが、結の香 |
宮城県 | 蔵の華、ひより、美山錦、山田錦 |
秋田県 | 秋田酒こまち、秋の精、吟の精、美山錦、改良信交錦、華吹雪、星あかり、美郷錦 |
山形県 | 羽州誉、改良信交、亀粋、京の華、五百万石、酒未来、龍の落とし子、出羽燦々、出羽の里、豊国、美山錦、山酒4号、山田錦 |
福島県 | 五百万石、華吹雪、美山錦、夢の香 |
関東地方の酒米
地名 | 品種 |
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茨城県 | 五百万石、ひだち錦、美山錦、山田錦、若水、渡船 |
栃木県 | 五百万石、とちぎ酒14、ひとごこち、玉栄、美山錦、山田錦、若水 |
群馬県 | 五百万石、舞風、若水、改良信交 |
埼玉県 | さけ武蔵 |
千葉県 | 五百万石、総の舞 |
神奈川県 | 若水、山田錦 |
※東京は酒造好適米の指定はありません。
東海・北陸・甲信越地方の酒米
地名 | 品種 |
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新潟県 | 五百万石、一本〆、雄町、菊水、越神楽、越淡麗、たかね錦、八反錦2号、北陸12号、山田錦 |
富山県 | 雄山錦、五百万石、富の香、美山錦、山田錦 |
石川県 | 五百万石、石川門、北陸12号、山田錦 |
福井県 | 五百万石、おくほまれ、越の雫、神力、山田錦 |
山梨県 | 吟のさと、玉栄、ひとごこち、山田錦、夢山水 |
長野県 | ひとごこち、美山錦、金紋錦、しらかば錦、たかね錦 |
岐阜県 | 五百万石、ひだほまれ |
静岡県 | 五百万石、誉富士、山田錦、若水 |
愛知県 | 夢山水、若水、夢吟香 |
三重県 | 伊勢錦、神の穂、五百万石、山田錦、弓形穂 |
関西地方の酒米
地名 | 品種 |
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滋賀県 | 吟吹雪、玉栄、山田錦、滋賀渡船6号、白鶴錦、兵庫北錦、兵庫恋錦、兵庫夢錦、フクノハナ、辨慶、山田穂、渡舟2号 |
京都府 | 祝、五百万石、山田錦 |
大阪府 | 雄町、五百万石、山田錦 |
兵庫県 | 五百万石、山田錦、愛山、いにしえの舞、白菊、新山田穂1号、神力、たかね錦、但馬強力、杜氏の夢、野条穂 |
奈良県 | 露葉風、山田錦 |
和歌山県 | 山田錦、五百万石、玉栄 |
中国・四国地方の酒米
地名 | 品種 |
---|---|
鳥取県 | 強力、五百万石、玉栄、山田錦 |
島根県 | 改良雄町、改良八反流、神の舞、五百万石、佐香錦、山田錦 |
岡山県 | 雄町、山田錦 |
広島県 | 雄町、こいおまち、千本錦、八反、八反錦1号、山田錦 |
山口県 | 五百万石、西都の雫、白鶴錦、山田錦 |
徳島県 | 山田錦 |
香川県 | 雄町、山田錦 |
愛媛県 | しずく媛、山田錦 |
高知県 | 風鳴子、吟の夢、山田錦 |
九州の酒米
地名 | 品種 |
---|---|
福岡県 | 山田錦、雄町、吟のさと、五百万石、壽限無 |
佐賀県 | 西海134号、さがの華、山田錦 |
長崎県 | 山田錦 |
熊本県 | 山田錦、吟のさと、神力 |
大分県 | 雄町、五百万石、山田錦、若水 |
宮崎県 | はなかぐら、山田錦 |
※鹿児島、沖縄は酒造好適米の指定はありません。
引用:日本酒の基礎知識 知りたいことが初歩から学べるハンドブック 木村克己著(新星出版社)
酒米Q&A
酒米を販売しているショップについて
興味があるので酒米を見たい人、もしくは健康の為に酒米を食べてみたい人などいると思います。
酒米を購入できる販売店なら「お米のにしら米穀店」があります。
こちらでは、「山田錦」や「ヤマビコ」を70%精米したお米を購入することができます。
ただ正直、酒米は食用として造られた物ではないので、パサパサして味はあまり美味しくありません。
酒米食として酒米を探しているなら、ネットショップにある山田錦の方が良いかもしれません。
白米になるまで精米してあり、口コミでも食べやすいという意見があるお米です。
まとめ
以上が酒米についてでした。
地方の酒米も数に入れると100種類以上あり、とても把握できないと思います。
なので、まずは生産量が高い酒米を使用しているお酒の味が分かってきたら、色んな酒米を試してみるのがオススメです。
同じ銘柄でも酒米による味の違いを楽しんで下さいね。
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